富士河口湖生涯学習館

図書館協議会 諮問・答申

●平成15年 答申

▲平成16年 諮問▲平成17年 答申

▲平成16年 諮問

富河図書発第8号
平成16年7月16日

河口湖町図書館協議会殿

河口湖町立図書館
館長  蒔田宗人

諮  問

「わが町の子どもの読書活動推進計画作成について」

 このことについて、図書館法第14条第2項の規定にもとづき次の通り諮問します。

諮 問 の 理 由

 近年、若者の読書や活字離れが取り沙汰され、その結果として子どもたちの読み書きの能力や語彙の減少がみられるなど、国語力の低下が危惧されています。

 国はその対策のため、平成13年「子どもの読書活動の推進に関する法律」を制定施行しました。この法の第2条には、「子ども(おおむね18歳以下の者をいう)の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならないこと。」と基本理念に規定されています。

 急激な社会変容は、子どもたちの生活態様にも大きな変化をもたらしています。そのなかでも情報産業の発展により、情報が氾濫する「情報化社会」への急速な進展は、大人はもとより子どもたちも、情報活用能力の習得が欠くことのできない課題となっています。この力の土台としても「国語力」の向上は、法の基本理念と結びつき、基礎・基本として欠くことのできないものであります。

 こうした点を踏まえ図書館では、生涯学習の基盤となる子どもたちの読書推進のため、読書環境の整備充実に向け、蔵書・資料の整備やブックスタート支援、読み聞かせやお話し会等々の活動を実施してきたところです。その成果か、ここ数年来図書館利用者や貸出冊数などが増加しています。

 平成18年度に予定される新図書館開館を、「子どもたちの読書活動の推進」の新たな機会とし、家庭・地域社会・保育所・学校など諸々と連携し、読書環境の整備及び読書推進の諸施策構築は極めて重要な課題であると考えます。

 従ってこのような状況を踏まえ、「わが町の子どもの読書活動推進計画作成について」をご審議され、答申されますよう諮問します。

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▲平成17年 答申

河口湖町立図書館
館長 蒔田 宗人殿

答  申

「わが町の子どもの読書活動推進計画作成」について」について

 平成16年7月16日付け、富河図書発第8号をもって、貴職より諮問のあった標記のことについて答申いたします。

平成17年9月7日
河口湖町立図書館協議会

会 長 渡辺 松雄
副会長  渡辺幸之助
副会長 木村 直子
    中村 美好
    松浦 浩子
    井出 英済
    越石 節代
    古屋さき子
    渡辺恵美子
    堀内るり子
    金沢 恵子
    外川 照女
    石川 泰永
    朝長 祐子
    三浦 綾子

答  申

「わが町の子どもの読書推進計画について」について

1.推進計画の策定にあたって

(1)子どもの読書活動の大切さ
 子ども時代の読書習慣は、成長後の読書や生き方に影響を与える。最近の子どもたちは、塾、習い事、スポーツ等一日の生活も忙しく読書時間がとれない傾向にある。その上人間関係が希薄で、コミュニケーションが上手にとれないといわれる。幼少時に聞き慣れた家族の声で読み聞かせてくれる物語は、その世界を広げ家族のコミュニケーションの幅を増やし、愛情あふれる家族づくりへの手助けとなる。読書は楽しい・おもしろいということを早くから体験できる環境を整えたいものである。また、物語に接することで自分自身を主人公におきかえ(感情移入)、次第に主人公と自分を分けて物語を客観的に読むようになる。

 読書することにより、子どもは抽象的にものを考える力や感動する力など、人としてよりよく生きるための力を身につける。このように子どもの読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、「生きる力」を身につけていく上で欠くことのできないものである。

(2)わが町の子どもの読書活動の現状と課題
 第50回(2004年)全国図書館協議会の読書調査報告によると、1ヵ月に読んだ本の冊数は、小学生7.7冊、中学生3.3冊、高校生1.8冊となっている。また、1ヵ月に1冊も読まなかった子ども(不読者)は、小学生7.0%、中学生18.8%、高校生42.6%で、全校種で不読者が大幅に減少、読書する子どもたちの姿が浮かび上がってきたと報じていた。(第48回調査では小学生9.3%、中学生31.9%、高校生58.7%)

 富士河口湖町で、2005年3月に保育園・幼稚園児(年長)、小学生(2・4・6年)、中学2年生、高校2年生を対象に読書の実態調査をしたところ、不読者の割合は小学生11%、中学生44%、高校生62%で、特に中学生・高校生は全国平均を大幅に上回っていた。まさに危機的な状況にあるといってよい。

 子どもたちは全く読書が嫌いなわけではなく、幼児95%、小学生78%、中学生53%、高校生58%が「好き」と答えているのである。しかし、1週間の読書時間は全校種とも最も多いのが1時間以内(小学生42%、中学生28%、高校生14%)であり、年齢が上がるにつれて不読者が激増している。

 78%もの小学生が「読書が好き」だったのに、中学・高校生になると半数近くが嫌いになってしまい、また、「読書が好き」なのに「読書をしない」子どもたちが多い現状は大きな問題である。

 町の図書館の利用率も年齢が上がるにつれて低くなっている(小学生54%、中学生30%、高校生21%)。利用しない理由で最も多かったのは、「借りに行く時間がない」(小学生40%、中学生35%、高校生37%)で、「遠い」(全体で26%)のも大きな理由になっている。テレビ、パソコン、ゲーム、携帯電話などの普及、塾や習い事、部活動などで生活時間が大幅に削られ、読書にあてる時間がないという理由以外に考えられる原因は何か。

 言葉を学び、豊富な知識や経験を積むだけでなく、創造力や表現力を高め、感性を磨き、人生をより深く生きるための力を育てる読書は、子どもたちの人間形成に不可欠である。それにはまず子どもたちに読書の重要性と楽しさを知らせ、体感させることが重要となる。

すでに読み聞かせや全校一斉の読書活動、ブックスタートなどを実践して成果をあげているが、公共図書館や学校図書館、一部の関係者だけでは十分な成果をあげるのに限界がある。

 家に本がある、近くに魅力にあふれた図書館がある、本屋へ行く習慣がある、読みたい本のそろった図書室がいつでも開いている、本をよむ大人が身近にたくさんいる……子どもたちが積極的に本と関わり、「いつでもどこでもできる読書の楽しさ」を身をもって味わえるための環境を整える町づくりが今求められている。家庭、地域、学校、行政が連携・協力し、一体となって子どもたちの読書生活を支える活動に取り組むことの意義は大きい。

(3)推進計画策定の背景・趣旨
 子どもの読書離れが指摘される中で、国では、21世紀を担う子どもたちが、読書を通して健やかに成長することを目的に2001年(平成13年)12月「子どもの読書活動の推進に関する法律」を公布、施行した。また、2002年(平成14年)8月には、この法律に基づき「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定した。2004年(平成16年)2月の文化審議会答申において読書は国語力をつける上で中核的な役割を果たすものであり、また、「教養、価値観、感性等」を生涯にわたって身につけていく上でも重要であると述べている。そのためには、「自ら本に手を伸ばす子どもを育てる」ことの重要性を提起している。

 山梨県においても、2005年(平成17年)3月に「山梨県子ども読書活動推進計画」を策定した。

 昨今、子どもたちの読書離れが叫ばれている中、町立図書館では2006年(平成18年)度に予定されている新図書館開館を「子どもたちの読書活動の推進」の新たな機会として、子どもたちが積極的に読書に親しみ、生涯にわたり読書習慣を身につけることができるよう、「わが町の子ども読書推進計画」を策定する必要がある。

(4)推進計画の目的
 子どもたちが、その成長段階に応じて読書のきっかけをつくり、そして、読書の習慣を形成・確立し、やがては主体的に読書活動に取り組むことができるよう、家庭や地域、図書館、学校などがそれぞれ読書環境を整備し、かつ、相互に連携を強化して読書活動の推進を図ることを基本的な考え方とする。

(5)推進計画の対象者
 幼少時より読書に取り組むことが大切なので、本町に居住している乳幼児、小・中学生、高校生、およびそれを取り巻く関係者や関係諸機関を対象とする。

2.読書に対する基本的な考え方

 どんなに時代が変わろうとも、メディアや情報機器がどんなに多様になろうとも、読書の重要性と魅力に変わりはない。一冊の本があれば「いつでもどこでも」楽しめるそのシンプルさに勝るものがないからである。

 しかし反対に読書の「魅力と重要性」に気づくまでは、そのシンプルさが必ずしも長所とはならない。読書の魅力は固い殻の中の甘い果実にも似ているからである。それは読書の前提として「読む力」と「読みたくなる環境」が必要だということである。

本町では読書に対する基本的な考えを「楽しい読書」「いつでもどこでもできる読書」「みんなで取り組み支える読書」の3つの観点からとらえてみたい。

(1)楽しい読書
 「○○のために読む」。読書の目的を考えたとき、最も重視したいことは「楽しみのため」である。それがやがて「勉強のため」や「研究のため」、「商売や仕事のため」という目的に変わっていくことはあっても、最も基本的な読書は「楽しいから、読みたいから読む」であろう。しかし、必ずしも読書が楽しいという人ばかりではない。

 「読書が楽しい」と感じ、「読みたい」という欲求が芽生えてくるためにはまず「出会い」が重要である。それもなるべく人生の早い段階で出会うこと。また、最も身近で日常的な、日々の生活の中に心を満たしてくれる本との出会いがあることが望ましい。

 「原体験」とも呼べる読書は、幼児期の絵本や家族による読み聞かせであることが多いと言えよう。しかし、読書の好き嫌いの原因をその時期のみに求めてしまうことには危険性がある。大切なのは、あらゆる成長過程において「本との出会い」をもたらす環境づくりであり、働きかけであり、社会の風潮づくりである。

 読書の楽しみは、周囲の協力によって培われ、やがて自ら見つけていく一生涯続く喜びであり、生きる価値の創造につながる重要なものである。そしてそれは「楽しい」と思える経験の積み重ねに支えられていることは間違いない。

(2)いつでもどこでもできる読書
 「出会い」の次に重要なのが「環境」である。楽しみに気づいた段階では、自ら読書を進めていく力はまだ弱い。読書以外の楽しみ―テレビや漫画、ゲーム等の誘惑は強烈だからである。

 そこで重要なのが「いつでもどこでもできる」という読書の特性を生かした環境づくりである。これに参加してもらうのは、家庭、保育所・幼稚園、学校、地域などのあらゆる大人と機関が望まれる。家庭の居間、子ども部屋など家の中のすべての場所に。学校図書館、学級文庫、保育所、児童館、地区公民館、町の図書館等のすべての公共施設に。そして、やがては自分が出かけていくすべての場所に本を携帯していくようになること。そのための貸し出しが、あらゆる場所で、可能な限り長い時間行われることが重要である。

(3)みんなで取り組み支える読書
 読書の「固い殻」を破るための「読む力」と「読みたくなる環境」をつくっていくためには、みんなで取り組むこと、そして支えていくことが必要である。

【家庭の役割】
 読む力のもとは家庭の教育力にかかっているが、識字率が話題にならない日本では、文章が全く読めない子どもはほとんどいない。ここで言う「読む力」とは、おもしろさが分かるということである。そのためにはまず「自分に合った本」との出会いが最も重要になると思われる。押しつけでない程度の周囲の勧めがあり、自分の興味と読む力に合った「おもしろいと思える本」との出会いから読書の習慣がついていく。また、従来から推進されてきている読み聞かせや、声に出して読むことの楽しさを伝えていくのも、家庭の重要な役割である。「自分に合った本」との出会いに導き、もっと読みたいという思いを抱かせること、これが家庭のもつ重要な役割だと言えよう。読み聞かせた後での「もっと読んで」という子どもの言葉は、一生を決めるといってもよい。

【保育所・幼稚園の役割】
 幼児期は好きなものが固定化してくる。そこで「自分に合った本」を自然に越える必要性がどうしても出てくる。保育所や幼稚園で新たな本との出会いを、多くの仲間と読み聞く時間を共有しながら少しずつ広げていくことが次のステップであろう。子どもたちの急激な興味・関心の広がりをうまくとらえた、保育士や先生方の読み聞かせや働きかけがあれば、読書に対する欲求は確実なものになっていくに違いない。

【学校の役割】
 次の段階は学校での読解力の育成と読書指導である。読む力は「読む技術」と読書経験の双方を保障してくれる学校全体の取り組みがないと身につかない。全国的に普及してきた「朝読書」は、「先生も一緒に読むこと」が大切な取り組みの一つになっている。つまり、読書が「楽しみ」であることを全ての大人が身をもって示すことの重要性を物語る。

【地域社会の役割】
 地域行政の果たす役割といえば施設の整備、人的な資源の活用(朗読ボランティア等)、情報機器の活用と情報の提供等があげられるが、読書推進を地域全体のテーマとしていくことがもっとも重要である。その視点として、文化的な側面、精神的な豊かさの側面だけでなく、経済的な側面も見落としてはならない。町民の知的なレベルの高さが、地域の文化だけでなく長期的に見れば経済の発展をも支えていくことを強調したい。地域をあげて読書運動を展開していくことが、子どもたちの「考える力」を養うことにつながり、やがて地域の人材を育てることになる。読書活動推進のための予算的な裏付けには、「投資」としての意味があるということをしっかりとらえる必要がある。

3.子どもの読書活動推進に向けて

(1)家庭・地域における読書活動の推進
【役割】
 ただ本を読めだけではなく、何のために読むか読書の意味や効用を理解し得る環境づくりが必要である。幼児期から毎晩読み聞かせを続けると表現が豊かで情緒に安定感を持つようになると言われる。また、親子のコミュニケーションが確実に深まる。大人たちは読書する姿を子どもに見せるよう自ら本に親しみ、本について話し合い、子どもが本に手を伸ばす環境を整えたい。家庭はその原点である。

 子どもが読書と初めて出会う場所。乳幼児期の子どもは暖かいふれあいの中で、周りの大人から本を読んでもらうことで心の安定を得、豊かな感性や情操、創造力などが培われる。また、読み聞かせの継続は、言葉の獲得や読解力を養い、学力の向上に大きく寄与すると言われる。各家庭では、日常生活の中で子どもが本と出会い、本の楽しみを味わい、親しみ、読書習慣を形成し、読書活動を継続していけるよう積極的な働きかけが望まれる。

【現状】
 子どもをとりまく環境は、携帯電話やインターネット、ビデオ、ゲ-ムなどのメディアの普及、塾や習い事などにより大きく変化し、家庭における読書時間の確保が難しくなっている。また、幼児期からの読書習慣が形成されていない子どもの活字離れによる読み書き能力の低下や想像力の欠如が指摘されている。

 このような現状から本町では、平成14年度から10ヵ月乳幼児健診時に「ブックスタート事業」を開始し、絵本を通して親子のコミュニケーションや読書習慣の形成を図るよう呼びかけた。該当者の半年後の事後アンケート調査では、読み聞かせを継続しているのは95.3%であり、(「10ヵ月になる以前から」17%、「ブックスタートの説明後にすぐ」41.5%、「2ヵ月以内に」31.7%)ブックスタートパックの配布後の3ヵ月間に約73.2%の方が読み聞かせを始めている。その子どもたちは、現在保育所の年少組となっている。

 保護者から読み聞かせを受けていない4.7%の子どもは、保育所や幼稚園での読み聞かせが初めての読書環境になる。

【今後の取り組み】
①推進体制の整備
 子どもの読書活動を活発にするためには、家庭、地域関係教育機関を通じたお互いの連携が必要である。それぞれが担うべき役割を果たしながら、公共図書館・保育所・幼稚園・学校・民間団体・ボランティアなどと連携を密にし、継続的に子どもの読書活動を推進する環境をつくることが大切である。

②各家庭で「読み聞かせ」の実施を
 町立図書館で推進しているブックスタート事業を受け、各家庭においては、「読み聞かせ」を継続的に取り組むことが求められる。この努力が核になり子どもが本にふれる環境づくりと読書習慣の形成が進むと予想される。

③保育所や幼稚園による「集団での読み聞かせ」の取り組み
 0歳児保育から3歳児まで入所している保育所においては、午睡時に「読み聞かせ」をしていくことから始めてほしい。家庭との連絡を取りながら習慣づけができれば有効であろう。

 3歳以上児は、保育士による集団への定期的な読み聞かせを行い、子どもの自発的な読書への橋渡し的な取り組みを促進することが求められる。

④児童館における取り組み
 町内における児童館・こども館は、6館開設されているが、学童保育の過程において読み聞かせボランティアを導入している施設とそうでない施設が見受けられる。図書館読み聞かせボランティア及び朗読ボランティアなどと連携して正しい日本語、美しい言葉など身につけ継承することも視野に入れたい。教員や親以外の大人が読み聞かせることによって、日常と違う興味がもてリラックスした居心地のいい場となれば、子どもたちは本にも興味をもち自ら図書館に足を運ぶようになる。

⑤公民館活動等における取り組み
 民間団体及びボランティアは地域公民館活動等に協力し、読書の楽しさを普及・啓発することが望まれる。公民館活動には、地域の老人クラブ、育成会、自治会など次代へ引継ぎ残すべき組織があり、これを活用した読み聞かせなどの読書活動は、子どもたちの興味・関心を一層引きつけるであろう。

(2)町立図書館における読書活動の推進
【役割】
 子どもの読書活動を推進するためには、常に身の回りに本がある環境を整備することが重要である。町立図書館は、子どもが自分の読みたい本を豊富な図書の中から自由に選択し、本との出会いを楽しむことのできる場所であり、保護者にとっては、子どもに与えたい本を選択し子どもの読書について相談することができる場所でもある。また読書活動や文献・資料に関する専門的機関として、地域における子どもの読書活動推進の中核的な役割を果たすことが期待されている。

【現状】
 町立図書館は、本館及び大石・河口分館での3館体制で運営している。本館は狭い暗いの悪条件ながら、県内では上位に位置する利用率をあげている。町民の意識の高さもあるが、他の市町村に先駆けての図書館ネットワークの充実、読み聞かせ会の開催、ブックスタートの実施等、職員とボランティアの協働による努力で目覚ましい成果を挙げている。しかし、残念ながらアンケート調査の結果では、町立図書館の利用率は、保育園児66%、小学生54%、中学生30%、高校生21%と年齢が上がるにつれ低くなっている。また、利用しない理由は、第1位が「時間がない」で38%、第2位が「遠い」26%、第3位「読みたい本がない」で24%となっている。

 町立図書館の読み聞かせに関しては、「知っているが利用していない」のは71%、「利用している」18%、「知らない」11%となっている。また、保育園児の29%、小学生の17%、中学生の10%、高校生の7%が本の入手先として、町立図書館と回答している。

【今後の取り組み】
①町立図書館施設の整備と充実
 新図書館を建設し、地域における子どもの読書活動推進の専門機関として活動の中核を担っていくことが期待される。そのためには、専門職員の配置、蔵書・施設整備などの充実が必要である。視聴覚資料の視聴やインターネットが使えるコーナー、乳幼児から高校生までの年代に応じたコーナーも整備が必要である。また、来年3月に合併する上九一色地域には分館が必要となる。

②図書資料の整備充実
 成長・発達段階に応じた幅広い資料、調べ学習に必要な資料、限られた学校図書館の予算では購入できない資料の提供など、計画的な整備を図ることが必要であり、さらに豊富で新鮮な資料の提供が求められる。

③図書館の情報化
 子どもの本やそれに関する研究書の所蔵情報や貸し出し情報、お話し会の開催情報、新着書、話題の本などの情報提供は、子どもの読書推進の上で大変重要である。「町立図書館」の所蔵情報や「富士河口湖町図書館情報ネットワークシステム」を活用したインターネット上での図書資料の所蔵情報提供、ホームページの公開などを通した地域への情報提供が必要である。

④「読み聞かせ会」「お話し会」「読み聞かせ教室」の実施
 司書によるお話し会が昭和61年から開始され、平成2年からボランティアによる読み聞かせ会に移行。現在では英語や日本語によるボランティアの読み聞かせ会に発展し、幼児や児童の主体的な読書活動のための導入として役立っている。今後も読み聞かせ会や素話(ストーリーテリング)などのお話し会を継続し、本と子どもを結びつける努力が必要である。また、併せて保護者を対象とした「読み聞かせ教室」、本の選び方・与え方の講習会などを実施し、読書の重要性に対する理解を促すことが大切である。

⑤乳幼児へのサービス「ブックスタート」
 乳幼児とその保護者へのサービスは、子育て支援の一つであるとともに、子どもの読書習慣の形成に寄与するものである。10ヵ月乳児健診時に図書館・健康増進課・ボランティアと共同で行うブックスタート事業は、本町では平成14年度から実施している。乳幼児の読書習慣形成、図書館の利用率の向上、参加者の高満足度など、非常に好ましい結果が出ているので今後も続けることが望ましい。

⑥青少年へのサービス
 昨今では、子どもは年齢が高くなるにつれ生活が多忙になり、それまでの読書習慣を継続するのが困難になる。本町でも実態調査によりその傾向が現れている。読書離れが著しくなる中学・高校生を対象にしたコーナーの設置と、図書資料の充実が急務である。中学・高校生などの進学や就職活動に向けた学習や、思春期の課題・問題の解決を図る学習の場となるような、年齢に応じた蔵書構成を整備し、学習活動への支援としてレファレンスにも積極的に取り組むことも重要である。

⑦ボランティア活動の推進
 子どもの読書活動を推進するため、必要な知識・技術を有するボランティアとしての参加を働きかけていくことが必要である。また、大人だけでなく、中学・高校生もボランティア活動の一環として、朗読や読み聞かせができるように養成・支援することも必要である。

⑧学校図書館への支援
 実態調査によると学校図書館を入手先と回答したのは、小学生33%、中学生21%、高校生20%であり、児童・生徒にとっては学校図書館が身近で利用しやすい環境といえる。また町立図書館と館内の小・中・高等学校図書館のネットワークが整備され、学校でリクエストするとネットワークにより他の図書館から必ず利用者の手に届くことも大きな理由といえる。富士河口湖町図書館情報ネットワークシステムを今後も活用し、学校図書館の限られた予算では購入できない資料の提供など、学校図書館を貸し出しスポットとして、資料を求める子どもへの資料提供は、必ず届ける姿勢を続けるという図書館関係者の努力も重要である。

⑨関係機関との連携
 町立図書館が中心となって、自治体内の保育所・幼稚園・小学校・中学校・高等学校・児童館・読書推進団体・青少年団体などの関係諸機関と連携した子ども読書活動を推進する取り組みを図ることが必要である。

(3)学校における読書活動の推進
【役割】
 学校図書館は、子どもがたくさんの本と出会うことのできる場であり、子ども同士が読書に関して情報交換をしたりすることが容易にできる場である。また、個々の子どもに合った読書指導ができるなど、読書活動の推進できる条件がそろった最も身近な場所でもある。

 「総合的な学習の時間」の実施に伴い児童生徒の主体的な学習活動による図書館の利用も増えてきている。

 子どもの発達段階や興味関心に応じた読書活動を支援し、図書館をさらに積極的に活用するよう働きかけるなど、子どもの読書に親しむ態度の育成や読書習慣の形成のうえで果たす役割は大きい。

【現状】
 本町には小学校7校、中学校4校、高等学校1校の合計12校がある。高等学校を除いたすべての小中学校で「一斉読書」や「読み聞かせ」などを実施し、子どもたちが読書に親しむためのさまざまな環境づくりに取り組んでいる。
 読書調査の結果、小学生では読む本を学校図書館で借りる子どもの割合が33%で最も多いが、中学生や高校生では、本屋や家が主な入手先で学校図書館の利用率は中学生21%、高校生20%とやや低くなる。しかし「町立図書館を利用しない理由」として、「学校図書館で借りる」と多くが回答していることに注目したい。

 本町の学校図書館の多くは、子どもたちがいつでも十分に利用できる環境が整っているとは言えない。毎日開館している学校はわずか4校で、残り8校は「週に2~3日(1校は4日)」である。司書が複数の学校を兼任していることにも関係している。
 司書が不在の日は、「閉館して施錠している」4校、「施錠はしていないので自由に閲覧できる」3校となっており、いずれも利用したい子どもが鍵を借りて開けたり、必要なときに担任や図書館主任の責任において開館したりしている。

 小中学校の図書館の蔵書については、5校が「学校図書館図書基準」を達成、他に達成に近い学校も2校ある。中には達成基準の半分をわずかに超える程度にしか整備されていない学校もある。また、満たしていても、使用に耐えないかなり古い本も数に含まれている現状もある。

【今後の取り組み】
①「一斉読書」の計画的・継続的実施
 担任・仲間と読書の経験を共有することは、互いに刺激し合いながら読書に親しみ、読書活動を行う意欲を高めるうえでも効果的である。

②推薦図書リストの作成
 図書館協議会の推薦図書はもちろんだが、身近な仲間・先輩・親・教師などが多様な角度・立場で推薦した図書のリストを作成して一冊でも多くの本と出会うための読書を推奨する。

③図書委員会の活動の活性化
 子ども自身が企画・運営に参加することにより興味や関心を引き出し、読書集会や読み聞かせ活動などに取り組み、子どもの読書活動の推進に向けての意識の高揚を図っていく。
 また、子ども自身の読書経験を生かした本の紹介や広報活動を行い、読書の楽しさを伝える。

④学級図書の設置
 短時間に気軽に本と接触でき、楽しみながら読書習慣を身につける有効な手段である。

⑤図書の整備・充実
 子どもの読書活動や学習活動を充実させるためには、図書の整備・充実が不可欠である。そのためにも適正な図書整備費の予算化が望まれる。

 学校図書館が十分に機能を発揮し、満足に活用されるためにも、「学校図書館図書基準」を満たす蔵書数の確保、子どもたちの興味や関心・ニーズに対応する図書資料・雑誌などの充実、読書センター・情報センターとしての役割を果たすための図書資料や情報の収集に努めることが重要である。

⑥司書教諭を中心とした教職員間の協力体制づくりと職員研修
 司書教諭や図書館主任が十分に役割が果たせるよう、また、資質向上のための研修会に積極的に参加できるように教職員間の協力、校務分掌上の配慮などが必要になる。また、学校における子どもの読書活動を推進するために、司書教諭や図書館主任が中心となり、全職員が子どもの読書活動の重要性について共通した認識をもち、読書指導や学校図書館を利用した学習指導にあたることが大切であり、その研修が必要である。

⑦図書館司書等の人的配置の充実
 子どもの豊かな読書活動を目指し、利用しやすい魅力ある図書館にするためには、開館日を増やし、いつでも図書館に専任の「人」(司書か司書に代わる誰か、例えば図書館支援ボランティアなど)がいることが大切な条件となる。本町には12学級未満の小規模校が多いが、小規模校の子どもにも等しく読書活動の楽しさを味わわせるには、1校に専任の「人」の配置が強く望まれる。子どもの要求や相談に即応でき、子どもの利用したいときに、必要な図書をすぐ利用できる体制づくりに専任の人的配置は不可欠である。

⑧家庭・地域との連携による学校の読書活動の充実
 保護者や地域のボランティアの協力を得ながら、地域と一体になって広報・啓発活動を推進することが大切である。現在行われている読書集会など読書に関連した行事、お話し会、ブックトーク(本への興味を引き出すように工夫して本を紹介する)、図書館だよりの発行などに、保護者や図書館ボランティアを直接・間接に参加させたりしてさらに推進・充実させる。また、ボランティア活動の一環として、中学・高校生が朗読や読み聞かせができるように養成・支援することも望まれる。

⑨情報化の促進と町の図書館や他の学校図書館との連携・協力
 新入生オリエンテーションの一環として町立図書館の見学を実施し、町立図書館の利用の仕方を学ばせ、幅広く利用を促す。

 本町ではほとんどの学校図書館で、すでにコンピュータが整備され、他の学校図書館や公共図書館とオンライン化することにより、地域全体で図書の共同利用・検索が可能となっているが、まだオンライン化されていない学校もあるので、早急な整備が必要である。

4.推進体制の整備

 国の制定した文字・活字文化振興法に謳っている通り、人的体制の整備、図書館資料の充実、情報化の推進等の物的条件の整備が基本的な必要用件となる。

(1)諸条件の整備
①図書購入費の増加
 新図書館建設にあたり、子どもたちのための読書環境の整備・利用環境の改善への期待は大きい。一方、現在の蔵書内容は古いものが多く、子どもの読書推進活動に十分資するものとは言えない状況である。子どもたちの多様な興味・関心に対応する新しい蔵書の確保が必要である。蔵書内容の充実を図り、子供たちが継続的に読書を楽しむ環境を整備すること、そのための図書購入費の増加は必要である。

②開館時間延長のための人的確保
 現行の図書館開館時間では、十分なサービスを提供しているとは言い難い。年少者など大人の付き添いを必要とする場合、また部活その他で時間的な制約が多くなってきている昨今の児童・生徒には、現在の開館時間では十分に対応できていないのが現状である。現在の社会環境では午後7時まで開館することが望ましい。そのためには人的整備が必要になるが、図書館司書の増員は必須である。さらにボランティアによる図書館業務の支援が実施されている現在、これをさらに発展させることも視野に入れ、開館時間の延長実施が望まれる。

③図書館員の研修
 子どもの読書に十分に対応すべく、図書館員(司書・アルバイト・ボランティア)の技能取得も必要である。研修等により、より高次のサービスを提供できることが望まれる。

④学校図書館職員の派遣
 学校図書館においては、開館日・利用時間が限定されている現状は好ましくないので、町からは人材の派遣、学校側ではボランティアの受け入れを検討し、改善が望まれる。

⑤分館の継続と設置
 町民が等しくサービスを享受できる観点から、遠隔地であることによる不利益が生じないように努めることも必要である。アンケート結果分析からも、町立図書館を容易に利用できない子どもたちの分館依存度が高いことが明らかになったので、分館の継続・巡回サービス・町立図書館と分館・学校図書館とのネットワークの整備等、必要な方策を講じることが望まれる。

(2)広報・啓発活動の推進
 本計画が町立図書館に限定された活動の推進ではなく、本町全体の取り組みであることを周知する。広報・インターネット・図書館だより等、図書館からの発信情報の増加と継続で、図書館・学校・家庭への本計画の意義の伝達、意識の向上を図る必要がある。

 また、調査結果で明らかな通り、ブックスタート、読み聞かせ活動の成果が上がっていることを踏まえ、このような活動を通じて、その実効性を子どもたち・町民が体験することは有効である。

(3)関係機関との連携・協力
 子どもの自主的な読書活動を推進するためには、家庭・地域・学校を通じた社会全体での取り組みが必要である。各々が担うべき役割を果たすとともに、町立図書館・児童館・保育所・幼稚園・学校・ボランティア・民間団体等の関係機関が連携し継続的に子どもの読書活動を推進していく必要がある。また、啓発活動や迅速な情報の交換(ネットワークの整備)、円滑な図書の相互貸借等の環境を整備する必要がある。

 以上の3項目において、子どもの読書活動推進を図るために必要となる予算の確保、人材の確保・育成、各図書館においては現在の開館時間を延長する等、利用者の便宜を図る措置が強く望まれる。
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