図書館協議会 諮問・答申

「生涯学習の推進及び支援と図書館のあり方について」

平成18年 諮問 / 平成19年 答申

平成18年 諮問平成19年 答申

平成18年 諮問

富河図書発 第9号
平成18年9月18日

富士河口湖町図書館協議会殿

富士河口湖町立図書館
館長 蒔田宗人

諮問

「生涯学習の推進及び支援と図書館のあり方について」

このことについて、図書館法第14条第2項の規定にもとづき次の通り諮問します。

諮問の理由

町民の長年の夢であった新図書館が生涯学習館として開館し、生涯学習拠点としての機能の発揮が期待されている。 生涯学習については、1965年ユネスコが「生涯の学習概念」を提案。我国では、81年中教審答申で「生涯教育について」に始まり、84年から87年にかけ臨時教育審議会で協議され「生涯教育から生涯学習」へと転換が図られた。それを受け、88年「生涯学習局」設置、90年に「生涯学習振興整備法」等が施行されている。 92年、生涯学習審議会は『人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択し学ぶことができ、その成果が適切に評価される』ような社会と生涯学習について答申している。

めまぐるしく情報化、国際化、産業構造等の変化する今日、絶えず新しい知識や技術の習得が迫られている。これらの学習基盤の整備は、学習者自身のキャリア向上のみならず、社会システムの基盤である人材の育成が求められている。そこで、当館にも「生涯学習の拠点」として、その機能を発揮すべく十分なる対応が求められている。

図書館サービスの目的として、①全ての利用者の読書要求に応え、豊かな読書環境を創造し心の安らぎを保障する。②社会の専門的な学習、調査、研究の要求に応える。③調査研究機能(情報・資料の提供)の確立等が上げられている。これらのことを含め、サービスの改善なども考えられる。
従ってこのような状況のなか当館の現状を踏まえ、「生涯学習の推進及び支援と図書館のあり方について」を次の二点について審議上、答申されますよう諮問します。

  1. 図書館資料の整備・充実のあり方について
  2. 情報・資料及び学習機会の提供のあり方について

平成19年 答申

富士河口湖町立図書館
館長 蒔田宗人

答申

「生涯学習の推進及び支援と図書館のあり方について」について

平成18年9月13日付け、富河図書発第9号をもって、貴職より諮問のあった標記のことについて答申いたします。

平成20年2月27日
富士河口湖町図書館協議会

会長 渡辺松雄
副会長 渡辺幸之助
副会長 古屋さき子
中村美好
松浦浩子
井出英済
越石節代
木村直子
渡辺恵美子
堀内るり子
金沢恵子
外川照女
石川泰永
朝長祐子
三浦綾子

富士河口湖町図書館協議会答申

平成19年度

生涯学習の推進及び支援と図書館のあり方について

1.答申の基本理念

(1)生涯学習の必要性について

様々な分野で激しく変化する現代社会を生きていくには、生涯にわたって学び続けなければならない。

(2)諮問の理由について

町民の長年の夢であった新図書館が生涯学習館として開館し、生涯学習の拠点としての役割が期待される。

(3)答申の柱について

①図書館資料の整備・充実のあり方について
②情報・資料及び学習機会の提供のあり方について

2.答申内容

(1)蔵書数

【現状分析】

  • 統計の数字だけを見ると決して少なくはない。特に人口比から見た蔵書数は充実している
  • つまり同規模図書館の平均蔵書数より多いが、読まれない本、古い本が多い。これではリピーターの確保は難しい。
  • 利用者の生涯学習という観点から見直したときも、事実上の蔵書数は多いとは言えない。
  • 廃棄したい本、寄贈本、コミック本が多く、相当量の書棚を占領している現状がある。
  • 利用者の意見には「読んでみたくなるものが少ない」という声が多い。
  • 分野によっては資料として利用価値のない古いものが多く更新の必要がある。

【提言】

  • 蔵書の質を確保できる、「実質的な蔵書数」という観点で見ればまだまだ不十分である。
  • 利用者の興味・関心を引き出し、それに応えられる「実質的な蔵書数」の確保に向けて早急に取り組む必要がある。
  • まず人口比に達するまで増やす。
  • 各年代層に合わせた学習機会を提供するために、相応の蔵書数が当然必要となる。
(2)蔵書の内容、質について

【現状分析】

  • 毎年更新しなくてはならない資料系の中に古いものしかない場合もあり、不便を来している。
  • 現状では外観が古くなってきている本が多い。資料として価値のある古い本はとにかく、読み物としての本は新しい方が利用者には歓迎されるが、その中に古い物が多い。

【提言】

  • 新刊本、雑誌を充実させるべきである。
  • また、その際アンケート(質問紙・メール等)を幅広くとって利用者の要望を聞くことと、要望する方法を広報等で周知徹底していくことが必要である。
  • これからの社会を担う子ども達に良書を豊富に提供したい。
  • 定年退職を迎える団塊世代にも関心をもってもらえるよう、その世代の求める情報(趣味、若い頃のベストセラーの本等)を得られる本などを増やしたり、拡大機器や老眼鏡の提供なども考慮するべきである。
  • 幅広い学習ニーズに応えるため、ジャンルの多様さ、最新の知識が得られるような資料への更新が積極的に行われることが望まれる。
(3)蔵書ジャンルについて
  • 富士山文庫で地域の特色を出しているが、世界遺産登録に向け利用者の増加が見込まれるので、文化遺産、自然遺産のコーナーとしてより一層の充実を図りたい。
  • 図書館の特色である富士山・郷土資料は今後も積極的に収集したい。特に富士河口湖町のみでなく、郡内も「郷土」ととらえる視野が求められる。
  • 文学に偏ってしまうのはどこも同じ傾向だが、新しい発見や刻々と変わる社会情勢等で変化している分野では最新の情報が届けられるように対処していきたい。 
  • イデオロギーの対立など歴史的にもまだ解決していない分野では、両方の立場から資料を揃えておくほうがよい。
  • 本館の利用状況をもとに、増やした方が良いと思われるもの、地域性を考えたもの等を今後優先的に購入していく必要がある。
  • 洋書、専門書コーナーの充実を。
  • ケータイ小説に関しては人気・内容を考慮して選ぶ必要がある。
  • 利用する回数の多い30~40代の女性を想定した本なども増やした方が良い。
  • 利用価値の高い資料がどれだけ確保されているかが重要。
  • 利用者に「図書館にあるかもしれない」と期待される蔵書の質と量を保障したい。
(4)視聴覚資料(CD・DVD・パソコンなど)について
  • DVDの資料を増やしていく。特に利用状況でニーズの高いものは優先的に購入すべきである。
  • ビデオは傷みの激しいものが多くみられるので、DVDへの更新が求められる。
  • 30~40代の女性利用者が特に多く、本人用、子供用と求めているので、この両者が望むような資料が増えればより利用者が増加するのではないか。
  • 定年退職者世代の要求するAV資料にも応えてほしい。
(5)雑誌類(季刊・月刊・週刊) について
  • この分野の充実は利用者の増加(図書館へ足を運ぶ機会の増加)につながる可能性がある。
  • 年代、性別により幅広い分野の雑誌類が考えられるが、生涯学習の観点で予算に応じて少しでも種類を増やす方向で考えてほしい。(スポーツ関係が少ない)
  • 利用回数の少ない雑誌については、別の雑誌に早めに切り替え回転率を高めた方が良い。
(6)新聞について
(7)図書館資料の整備計画について
  • 年次計画をたてて、ジャンル別・分野別に予算要求をし、資料の充実をはかっていったらどうか。
  • 視覚障害者に対するサービスも今後検討していく必要がある。
(8)利用者について
  • 生涯学習館の利用は当初の予想より多く、町外からの利用者もある。また、登録者が図書館に近い地域ほど多いという実態がある。
  • 居住地区により利用に差が生じるのは仕方がないが、循環バスなど多くの人に利用しやすい状況 を整えていくべきである。
  • 特に合併後の上九一色地区からのバス利用を検討していただきたい。
(8)利用者について
  • 生涯学習館の利用は当初の予想より多く、町外からの利用者もある。また、登録者が図書館に近い地域ほど多いという実態がある。
  • 居住地区により利用に差が生じるのは仕方がないが、循環バスなど多くの人に利用しやすい状況 を整えていくべきである。
  • 特に合併後の上九一色地区からのバス利用を検討していただきたい。
(9)利用時間・状況について
  • より多くの人に利用してもらうことを考えると、社会人の勤務時間終了後、学生の授業後に利用できる時間帯に図書館が開いていることが理想的である。
  • 平日(10:00~19:00)、土日(9:00~17:00)であるが、できたら土日を1時間延長する方向で考えたらどうか。
  • 平日の5時以降は閑散としている時が多いようなので、午後7時まで開館していることを広報などで何度も周知していけば、夕方以降の利用も増えるのではないか。
  • 夏(7月~9月)の夕方はまだまだ明るいので土日時間を延長するなど、季節に応じて考慮したらどうか。
(10)他図書館との連携について
  • 学校図書館は、特に資料面で町や県等の図書館のサポートを必要とするので、そのサポートとしての連携は重要である。
  • 図書の購入には限りがあり、また情報交換の面からも他の図書館との連携は今後更に重要になってくる。
  • 1館で全てのニーズに応えられる資料整備には限界がある。他の図書館と協力して利用者へのサービスに努めることが現実的である。
  • 近隣から借りる本は、早いうちに購入する。
  • 町内の学校図書館ともリクエスト等でさらに連携をスムーズにしていってほしい。
(11)職員数や職員体制について

(増加の要求に向けて)

  • 情報化社会に対応して図書館における情報サービスが重要になっている今日、職員の仕事量も増  え、より専門的な知識や技能を身に付けていることも要求される。事務的な仕事が多い上に、文化的な情報や知識を提供する様々なイベントも実施している。
  • 専任の職員を減らして ボランティアに頼るという現状は、“教育ビジョン”に矛盾している。充実した図書館活動が安定して行われるためにも専任の職員の確保は必要である。
  • 土・日の出勤は少なくしていき、正規職員を増やす方向で考えるべきである。
  • 日図協の数値目標(人口1~3万人・職員数8名)と比べると増員が望まれる。特にレファレンスの質問に適切に対応するには、上記数値目標にもあるように4名の常勤有資格者の配置は、最低必要であろう。
  • 2006年の貸し出し数が179,769冊というのは、県内では圧倒的に多い冊数である。それに対して県立図書館の貸し出し数は、2006年3月31日現在、年間66,668冊で職員5名ということからみても、富士河口湖町の職員増員はぜひしてほしい。
  • 利用者のためにより良い図書館サービスを実施するには職員増が必要になる。
(12)アルバイト、ボランティアについて
  • ボランティアの協力は今後も必要(ボランティア本人の生き甲斐ためにも)であるが、ボランティアに頼ることなく正規の方々を増やしていく。
  • ボランティアも職員と同じように行事予定やテーマゆかりの本の展示内容等、情報を把握し、利用者へのサービスに努める。
(13)図書館予算について
  • 図書購入費は現状、町民一人当たり500円弱であり全国平均の半分である
  • 町の“教育ビジョン”の実現に向けても予算の確保は必須である。施設・建物はこれ以上増やさないで、今後は内容を充実させていくことに力を注ぐべきである。
  • 図書館は町の将来を担う人材の育成を担っているので、特に充実した業務ができるような人的配置が望まれるし、時代に即した新しい図書の購入も急務である。
  • 県内の施設との比較でも当図書館の利用がきわめて多く実績が高い現状では、予算増は当然の施策と考えられる。
  • 最新情報や利用者のニーズに応えるために充分な予算が求められる。
(14)その他
  • 児童を対象にした行事やお話会などは充実している思われる。ヤングアダルト向けのコーナーも見やすく興味を引くような工夫があり充実している。新刊書の紹介も職員の努力がみられ、少ない人数でよくこなしているという印象が強い。
  • 町役場の職員が仕事のために図書館をどのように利用しているのか実態を調べてみたらどうか。
  • 図書館のイメージとして「生涯学習を支援する場所」「生活する上に必要な資料を探す場所」だが、子ども、母親が多く利用する富士河口湖の図書館は、子育てや料理など子どもと親が一緒に閲覧できる場所があってもよいのではないか。
  • 新刊本購入にあったては司書以外にも外部の人に協力を求め、新刊本購入委員会を立ち上げ正規職員の負担を軽くすると同時に、広く希望をとれるような仕組みをつくったらどうか。
  • データベースの充実が求められる。
(15)企画事業について
  • 子どもへの読み聞かせ、クリスマス会、乳児への児童書提供など年間を通じ様々なイベントが催され、職員の方々の熱意が伝わってくる。今後は生涯学習館としての図書館という立場で、大人向け、特に成人男性・お年寄り向けの事業も増やし、未開拓の世代に図書館利用を促していくべきである。
  • お年寄りの方々に昔話、あるいは、絵本の読み聞かせなどをお願いし、積極的に図書館に足を運んでもらったらどうか。
  • また社会人・高齢者対象の映画会、流行の作家等による講演会などの事業も実施してほしい。
  • 他の課や機関との連携をとり、さまざまなイベントを図書館で知らせると同時に、関連する資料を展示したらどうか。
  • 映画の上映、子ども映画鑑賞会や図書館独自で企画する読書感想文、感想画のコンクール等があってもよいのではないか。
(16)情報・資料の提供について
  • 初めて図書館に来た人でもスムーズに本が探せるような見出し等がほしい。児童書も有名なシリーズものは、著者名が分からなくても探せるような案内があるといいと思う。
  • PR活動が重視される。図書館がどんな情報を持ち、利用者はどんなサービスを受けられるか、新しく転入してきた人、図書館を利用していない人は、意外と図書館の存在を知らない人が多い。今後も広報等をさらに利用したより積極的なPRが望まれる。
  • 図書館は地域で最も情報が集まる場所であってほしい。
(17)貸し出しシステムについて
  • 自動貸出機の導入は、プライバシーの保護の効果もあり、より気軽に図書館利用ができるようになった。
  • 新システムの導入で、カウンターの混雑の解消、省力化によるカウンター業務以外の業務が多くこなせるようになるなどプラス効果が大きいが、読み込みがうまくいかない時には返って時間がかかり、待っている利用者に迷惑がかかる場面も見受ける。適度な援助が今後も必要である。
(18)レファレンス(図書館を利用する人が必要とする資料や情報を探すお手伝い)について
  • 図書館の機械化で便利になりサービスの幅も広がってきたのはよいが、機械に弱い人たちにとっては、冷たく感じられたり、戸惑ったりすることもある。
  • レファレンスサービスは、情報サービスも含めて今までと同様に重要である。資料を提供するだけでなく、人間のあたたかさが感じられる援助も大事にしていってほしい。
  • 利用者の増加に比例してレファレンス件数も増加していく現状では、これまで以上に職員の研修機会を持ち、利用者に速やかに対応できる図書館としての期待が高まる。
  • 大人向けだけでなく子どもが調べ学習する場として定着し、生涯を通して図書館と関わってゆく習慣が小さい頃に自然と身につくようなサービスが求められる
  • 適切なレファレンス・サービスの提供のためには、常勤の有資格者をいずれの開館時間にも配置して頂き、長期に渡るサービス提供で初めて町民からの信頼が得られ、職員の技能・経験も鍛えられ、レファレンス・サービスへの需要も定着していくものと思われる。
  • やはり専門分野に対して知識や技能をもった職員が必要。職員の増員とともに、図書館活動のさまざまな面で利用者と職員の協働(お互いの助け合い)が求められると思う。
  • 図書館をよりよく利用してもらうために、レファレンス専門の職員がいることが望ましい。また、それが利用者にもはっきり分かる形(コンシェルジュサービスなど)にすることが望まれる。
(19)職員の研修体制について
  • 情報化や時代の変容に応じた積極的な研修が大事になる。安心して研修するためにも人的な配置は必要条件である。
  • 新しい図書館のもと、より専門的な知識を必要とされ、かつ期待されるなか、職員の研修強化は重要課題と思われる。そのための機会は惜しみなく与えて欲しい。
  • 地域の図書館活動において最も重要なのは、建物でも資料点数でもなく、職員の質と日々の業務、また、それによって得られる住民からの信頼と住民の情報活動の向上である。そのためにも職員の定期的な研修は必要不可欠であり、それを可能にするための人員確保は急務である。
  • 図書館サービスをより充実させる為には、職員の役割が大きい。専門的な知識や能力・技術、しかも利用者に親切に接することが望まれる。利用者へのきめ細かい対応やフロアサービスの技術などは研修してできることである。
  • サービスに止まらず、その時々の問題に対してもその状況を知っておくことなども大事。
(20)その他
  • 本町は中央部に湖を持つ特殊な地形で、町村合併により利用者の居住地域がさらに拡大した。そのため、生涯学習館1館のみによる適切なサービス提供は逆に難しくなりつつあるとの懸念がある。全ての町民に等しいサービスをという理念から考えると、やはり今後も遠隔地へのサービス提供は、常に考えていかなければならない重要課題であろう。
  • 各地区の分館の貸し出し数が減少している現状ではあるが、中央館まで来られない町民が一定数いることに配慮し、移動図書館サービスの提供など遠隔地住民の需要の掘り起こし作業は今後とも強く望まれる。
  • 図書館活動で最も重要なソフトウエアの向上の観点から考えると、今後全ての住民への等しいサービス提供のための適切な図書館ネットワークの構築が実現されることを望みたい 。
  • 図書館ボランティア、「友の会」等の任意の団体の活動方法、連携の仕方について検討を進め、予算の確保と同時に住民の協力を図書館業務にどう結びつけるか、活用の仕方によりいっそうの工夫が必要となる。
  • 図書館への意見箱を置き、利用者の要望を把握する。
  • 図書館のホームページの充実。

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