富士河口湖生涯学習館

図書館協議会 諮問・答申

●平成14年 諮問 / 平成15年 答申

▲平成14年 諮問▲平成15年 答申

▲平成14年 諮問

河図書発第  10号
平成14年7月15日

河口湖町図書館協議会殿

河口湖町立図書館
館長  持田利雄

諮  問

「河口湖町立図書館とNPOとの協働をどう構築したらよいか」
(注)NPO=Non Profit Organizatoin(民間非営利組織)

 このことについて、図書館法第14条第2項の規定にもとづき次の通り諮問します。

諮 問 の 理 由

 昨今、高齢化の進行、完全学校週5日制の導入等による余暇の増大など、社会の変化に伴って人々の生きがいや自己実現など、人間性豊かな生活を求める意識が高まってきています。
 昭和61年の臨時教育審議会第2次答申では、「青少年や成人が生きがいや充実感を持って生きていくため、奉仕活動などボランティア活動を振興していくことが重要である。」と勧告しています。
 平成10年の学習指導要領の改訂ではボランティア活動の積極的導入や「総合的な学習の時間」「調べ学習」の推進などが指摘されています。
 更に、平成12年12月の教育改革国民会議の報告では「奉仕活動を全員が行うようにする」と提案しています。

 過去のボランテイア活動は、社会福祉面にかたよりがちでしたが、今では学校、社会教育、芸術文化、青少年健全育成、地域安全、環境、まちづくり、災害救済、人権、国際協力、国際交流等社会の至る所で幅広く行われています。
 また、学習活動で身につけた知識や技術を地域社会の中へ還元したいという人や、ボランティア活動を志す人、支援を希望している施設等も多くなってきています。
 こうした中で、河口湖町立図書館では、多様化、高度化する学習ニーズに応え、図書館活動の活発化を図っていくと共に、生涯学習の拠点施設として重要な役割を担う図書館において、ボランティア活動及びNPOなど新しい組織との連携・協力が図書館活動の極めて重要な課題となってきました。
 河口湖町における図書館ボランティアは「古本市の図書館友の会」「本の読み聞かせボランティアうらら」「人形劇団のたんぽぽ」「大型紙芝居制作の芽吹きの会」「朗読エトワールの会」等がありますが、個々の活動をしているのが現状です。

 図書館におけるNPO参加は「富士山と湖のある文化の町」の町づくり、人づくりへの参加でもあります。
 本町における新図書館建設も近い将来実現の見通しがされる中、「長期的な展望に立って、図書館とNPOとの協働をどう構築していったらよいか」について審議され、答申されますよう諮問します。

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▲平成15年 答申

河口湖町立図書館
館長 持田 利雄 殿

答  申

「河口湖町立図書館とNPOとの協働をどう構築したらよいか」について

 平成14年7月15日付け、河図書発第10号をもって、貴職より諮問のあった標記のことについて答申いたします。

平成15年9月3日
河口湖町立図書館協議会

委 員 長    渡辺 松雄
委   員 中村 美好
        井出 英済
        安富 蘭子
        松浦 浩子
        外川 照女
        古屋 さき子
        堀内 るり子

答  申

「河口湖町立図書館とNPOとの協働をどう構築したらよいか」について

はじめに

 1995年に起こった阪神・淡路大震災でのボランティアの大活躍が契機となって、ボランティア活動が脚光を浴びるようになった。また、社会の成熟化にともない、地域社会も大きく変貌し、住民ニーズが多様化、複雑化するなか、様々な課題が顕在化している。こうした課題に的確に対応していく新しい仕組みとして、行政とNPOの協働が求められてきている。

 今日、多くの人々が「生きがい」や「自己実現」など人間性豊かな生活を求めている。また、身につけた「知識」や「技術」、「余暇の時間」等を地域社会に還元したいとも考えている。こういったボランティア意識の高い人々が増えてきている。一方、社会の様々な分野や行政サイドからは、支援を希望するところが多くなってきている。

 現在、社会教育施設である公立図書館は、利用者のニーズや意識が多様化する中で、単なる本の貸し出しや受け身のレファレンスだけでは利用者が満足できない状況になっている。今、公立図書館に求められているサービスは、時代や利用者のニーズを的確に把握し、それに如何に旨く対応していことができるかにかかっている。一例としては、 学校週5日制の下での子どもの調べ学習や大人の様々な資料作成をサポートしたり、夜間の利用時間の延長などがあげられる。

 こうした新しい社会や図書館運営の流れを受け、町立図書館は町民の想いや活動を図書館運営に生かしていく必要がある。

1 町立図書館の現状と課題

 町立図書館の最大の問題は、その狭さにある。書架にはいりきれず、溢れた本が横向きに積まれ書架と書架の間は利用者同士が譲りあわなければ通り抜けることができず、本選びに集中することもできない状態だ。閲覧室も同様のため、大勢の利用者が館内を利用できない。一日も早い新町立図書館の建設が望まれる。

 このような劣悪な状況下にもかかわらず、少人数の職員とアルバイト、ボランティアの努力により、平成14年度の県内市町村の図書館員数と貸し出し点数をみると、河口湖町立図書館職員一人あたりの年間貸し出し点数は60,356冊と県内第一位となっている。 町立図書館の開館日数は本館、分館を合わせると317日で、その稼働率は八ヶ岳大泉図書館についで県内で2番目になっている。

 開館日数及び職員一人あたりの貸し出し点数からみても、職員の負担はかなりのものがある。2000年12月の「生涯学習審議会図書館専門委員会報告」の数値目標は、1~3万人の自治体では8名(有資格者)、4名(非常勤・臨時職員を含むフルタイム相当人数)の計12名となっているが、町立図書館の現状は、たった3名と大幅に下回っている。

 今後、町村合併後の新図書館運営においては、人口が2万5千人ちかくになることを考えると、利用者に満足のいく充実した図書館運営をしていくためには専門的職員(司書)の大幅な増員が急務となる。併せて、新町立図書館建設の早期実現を図っていただきたい。

2 住民の要望に応える町立図書館

 本年、町立図書館に対して夜間開館の要望が強くだされた。以前にも何度か出された要望だが、職員数の不足もあり実施にはいたっていない。
 県内図書館の夜間開館状況と職員勤務形態をみても、概ね夜7時まで週2回。職員の超過勤務によって開館している。なかには火曜日~金曜日の週4日を夜間開館する図書館や石和町立図書館のように開館日全て夜9時まで開館している図書館もある。

 町立図書館においても専門的職員(司書)数を増やし、当面、週1~2回を目安に夜7時まで開館時間を延長し、住民の要望に応えていく必要がある。
 分館に関しては、本館の内容、機能を充実させていくなかで、地区の児童館等とタイアップさせながら運営を職員と地区住民によるボランティアの協働に委ねていくことも考えられる。ボランティアの活動が自主的に盛り上がっていきNPO設立に繋がっていく場合には、行政は、そのNPO活動を支援し連携していくべきだ。

 大きく変化する社会の中で、住民のニーズも多様化してきているので資料・情報の充実と多様化が迫られている。その為には、活字、映像、電子の媒体を問わず必要とする資料・情報が十分入手できる予算措置を町当局に働きかけていく必要がある。

3 NPO・ボランティアの役割

 NPOとは、一般的には、「民間非営利組織」のことをさし、具体的には「特定非営利活動法人及びボランティア団体や市民活動団体等の任意団体」のことをさしている。
 1998年12月にNPO法が制定されてから4年半で県内の県知事認証のNPO法人数が当初の2団体から64団体に増大している。

 現在、住民生活にとって大切な福祉・教育・環境・まちづくりなどあらゆる分野でNPO(民間非営利組織)の活動が脚光を浴び、その活動の重要性は年々高まってきている。また、行財政改革の一環として、行政の仕事で民間にできることは民間に任せようという動きが全国の自治体に拡大するなかで、ボランティア意識を持って地域で様々な活動を行うNPOの存在が注目されている。

 NPOは単なる同好会、同志的組織ではなく役所など行政組織と同様に社会生活に必要な分野において住民に貢献する公益的事業を行う組織である。活動は、ボランティアによる自発的参加により、行政組織など外部からコントロールされないことが原則になっている。活動内容は、ボランティアと類似しているが、ボランティアが原則無報酬なのに対して、NPOは組織維持やスタッフ報酬のために有償のケースが多い。 

4 望ましい町立図書館(行政)とNPO・ボランティアの協働について

山中湖村では、村立図書館の新たな運営形態としてNPOに図書館運営を委託しようという試みがある。

 河口湖町には、図書館活動に関わる組織として幾つかのボランティアグループが存在し活動しているものの、NPO組織はまだ存在していない。近い将来、住民の内発的、自発的な動きとしてNPOが設立されれば、町立図書館との協働も可能になる。

 現在、町立図書館でも数多くのボランティアの協力を得て運営が行われている。これらのボランティア活動は、単に担当職員の不足を補うということ以上に、協力者の方々自身に生きがいや内的充実感を味わってもらえることに大きな意味がある。

 行政や企業の手の届かない分野で多くの住民が自発的に、また、生きがいを感じながら楽しく運営していくNPO活動は、これからますます役割が大きくなるだろう。

 行政とNPOが、それぞれの特性を認め合い活かしながら連携・協力して多様化する住民ニーズに対応していけば、住民に対しきめ細かで柔軟なサービスができる。行政とNPOが相互の立場を理解し、活動領域を確認しながら協働し、更なる住民サービスの充実に繋がることが大事である。 その為には、行政とNPOの協働に関して研究・研修を深めていく必要がある。

 自治体が責任をもって図書館サービスを展開する上で、NPOが長期的安定的にサービスを継続していくことができるかどうかは今のところ未知数である。

 今後の町立図書館運営においては、専門的職員(司書)の増員を図り、今までの実績を大事にし、主体性をもって図書館サービス等の事業計画を立て、その上にたってNPOやボランティアの人たちの自発性や協力性と旨く結びついていくことができれば、住民に対する図書館サービスを今まで以上に活性化させたり充実させたりすることができるだろう。  

おわりに

 今、我が国が抱えている大きな問題はデフレ不況等の経済問題である。年々悪化するデフレ不況の中、倒産や失業者の増加も止まるところを知らない。国や地方公共団体の財政も年々悪化するばかりである。行政サイドからは、 厳しい財政状況の中で業務内容を精選、削減し「小さな行政」を目指す必要に迫られ、民間にできることは民間に任せていくという考えがでてきている。そういう中からNPOとの協働というアイディアがでてきた。

 NPOとの協働で大事なことは、まちづくりへの住民の積極的参加や民意を積極的に政策へ反映させることであり、コスト削減等はその結果として出てくるものである。
 生涯学習の拠点施設としての役割を担う町立図書館にとって、多様化、複雑化する利用者のニーズに対応すべく、今後、ボランティアやNPOの存在は、重要性を増すものと考えられる。

 現在、図書館ボランティアとして幾つかの既存グループがある。それらのグループとの連携や情報交換等をより密にし活動を活発化させていけば、より一層充実した図書館運営サービスができる。将来、本町においてNPOが立ち上がった時は、住民の利益実現を図ることを大事にしながら、行政の下請けではなく、あくまでも対等なスタンスで活動していくべきである。行政・NPO・ボランティアは相互に連携しながら研究・研修を深め、住民のニーズによりきめ細かく応えていけるよう活動していくことが大切である。

 今後も町立図書館は多様化、複雑化する社会の中で、地域住民の情報拠点として、また、生涯学習の拠点として中身をより一層充実させていくことが求められている。

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